ある秋の休日。

あたしと朋也とボタンは、特に用事もないまま、ただぶらぶらと街を散歩していた。

「ねえ、本当にどこに行くか、決めてないの?」

「ああ、まったく決めてねぇ」

「女の子と遊ぶってのに、気が利かないわねぇ」

「ほっとけ」

それだけ言って、また歩きだす。

そんな朋也をあたしは後ろからついていきながら、昨日を思い出していた。

・・・昨日の放課後、朋也があたしにどっか行こうぜと誘ってきた。

受験生なのに、こんなことしてていいのだろうかと思ったが、どうせ家にいても勉強などしないに決まってるの
で、

あたしは、首を縦に振った。

それはそれでいいのだが、しかし不思議だ。

何が不思議かって、こいつが自分から、何かしようと誘ってくることは、まずない。

いつだってこいつは冷めてるというか、無気力というか・・・そんな感じだからだ。

「もしかして・・・・・・」

「ん、どうしたんだ杏?」

「な、なんでもない」

まさか大事な話があるんじゃあ・・・・・・



・・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・。




ケース1

「杏、俺と結婚してくれっ!」
「えっ、本当?朋也っ」
「ああ、本当だ」
「だったら、証拠を見せないさいよ」
「仕方ねえな・・・」
朋也の顔があたしの顔に近づく。
そのまま朋也の唇とあたしの唇とが、そっと重なった・・・。


・・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・。

そして朋也の舌が、あたしの舌と重ね合わせて・・・





「・・・へへぇ」

「杏、おまえ、今すげえ変な顔してたからな」

「えっ!?」

我に返る。

「すっげえ、にやけてたぞおまえ」

「そ、そんなことないわよっ!」

一体どんな顔をしていたのやら。

羞恥心で顔が赤くなる。

「なんつーか、春原が妄想してる時の顔にそっくりだった」

「・・・広辞苑とイミダスのどっちがいい?」

「おまえ、そんなの、どこに隠し持ってんだよ・・・・・・」

「とにかくっ!あんなヘタレアオミドロと一緒にしないで。虫ずが走るじゃないっ!」

「馬鹿、アオミドロはまだ酸素を出すだけマシだろう」

「それもそうねぇ」

「そうだ、ヘタレゴキブリってのはどうだ?」

「それでもいいけど、ゴロが悪い」






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